おかしなくらいおかし好きおかしなひとたち共に創り共に奏でた145日間【教室編③】
共に創り共に奏でた145日間【教室編③】
仕事に家庭に、毎日みなさんお疲れさまです。時間に追われる毎日から少しだけ離れてみませんか?一歩引いて、今の自分を見つめてみませんか?というのが大人向け講座のテーマ。誰かの言葉に耳を傾け、五感を研ぎ澄ませ、自分と向き合う、そして自分の体を労る時間を慈しむ。教室編③④は、大人向け講座の全6本をレポート。
◎『夜の役員会』(場所:星が丘テラス)
ゲスト:森實 敏彦さん(タマディック)、水野 宏洋さん(東山遊園)、若月 貴子さん(クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン)、石川貴也さん(側島製罐)、林 直孝さん(J.フロントリテイリング)、松本 洋介さん(コラボスタイル)、司会進行/原豆彦(春日井製菓)
初日の夜に開催された「夜の役員会」。「スナックかすがい」のスピンオフ企画で、通常ゲストは2名だが、今回はなんと6名。いずれもおかサマに参加する、愛知に拠点を持つ6社の代表取締役や常務という錚々たる顔ぶれ。しかも初の屋外開催という、“真夏の夜の夢”のようなイベントとなった。
昼間に行われた絶叫際の熱気と興奮の余韻が残る屋外のイベントスペースに、80人もの観客の方が次々と階段に腰を下ろす。この日の観覧は無料。各自ビールやおつまみを購入し、思い思いに楽しむというフリーなスタイルも、サマーフェス感があっていい。通常の「スナックかすがい」ではスクリーンを使ってゲストを紹介するが、この日はスクリーンもなし!ひたすら喋り倒す150分。これまた初めての試みとなった。
サウナが好きすぎて、本社に社員とお客様のために本格的フィンランドサウナを作ってしまったタマディックの森實(もりざね)さん。実は飛行機や車の設計を真面目にやっているエンジニアリングの会社ですが…。
一世風靡からの赤字転落、からのV字回復を実現させたクリスピー・クリーム・ドーナツジャパンの若月さん。ドーナツを通してお客様にJOYを届け続けている。
もともとはバーデンダーという異色の経歴を持つコラボスタイルの松本さん。名古屋をかっこよくしたいと起業し、ワークスタイル変革カンパニーを率いる。
誰もが知る松坂屋やパルコなど百貨店事業をメインに、「くらしの新しい幸せを発明する」を掲げるJ.フロント・リテイリングでデジタル部門の役員を務める林さん。
会社に役職が存在せず、社長という肩書きを持たない側島製罐の石川さんは、創業118年の老舗缶メーカーの6代目。「人生の宝物を入れるもの」を作り続けている。
そして今回の会場となった星が丘テラスを運営する水野さん。ライフスタイルの提案を軸に星が丘という街の価値について考え続けている。
この6人がテーマも何もなく思いのままに語り合った。前半、自然湧出したテーマは「自己申告型報酬制度とは」。側島製罐の石川さんが導入している注目の制度がなぜ成り立つのか?どう成り立たせているのか?に全員が根掘り葉掘り聞いていく展開に。
側島製罐は、社長が最終決裁とはせず、自分で考えて周りの協力を得てどんどん実行する自律的な組織運営をしている。何をやるかだけでなく、なんと給与も自分で申告する。それを石川さんは『覚悟の交換』と言い切る。すべての責任を負うのが経営者としての役割。それでもみんなに任せる。みんなを信頼すると。
若月さん「社員全員に目が届く規模だからできること?」
石川さん「いや、何人でもできると思う。会社は先行投資をしているだけだから。評価も何もしなくてもいい」
森實さん「制度として成立するまでの過程がイメージできない。でも何だかできそうな気もする」
林さん「評価がないとは?その上での給与の自己申告?評価する側のストレスもない?」
石川さん「難しいことではないし、評価するストレスはない。評価よりも目標設定が重要。目標設定で合意ができていれば給与の自己申告はできる。経営目線で自分で考えることに価値がある」
自社で取り入れるためのヒントはないか?誰もがそんなことを思いながら次々と質問を投げかけていたようだった。
ゲスト同士が自由に交流する「かすがいタイム」を経て、後半戦へ。
前半戦の流れからのテーマは「何を生み出し、どんな価値を作っているのか?」。
『感動共創』を掲げる林さん。ものを買うことで心が満たされる時代は終わり、ワクワクすること、ときめくことにお金を払う。感動を一緒に作り、そこに価値を提供したい。エンジニア集団を率いる森實さんは、新しい技術を活かして社会を変えているのがエンジニア。エンジニアであることの喜びを感じてもらうためには、健やかな体も必要だとサウナの存在意義を語った。「星ヶ丘の価値を上げる」と語る水野さん。この街に来ることが社会課題の解決に繋がるようなことをやっていきたいと、「ボタニカルタウン宣言」を推進。目指すは、人にとっても自然にとってもより良い生活が叶えられる街づくりだ。
先を見据えて果敢にチャレンジする各社。
「失敗は許されるのか?」
の問いには力強い言葉が続いた。
「ポカミスはダメだけど、失敗はチャレンジの証」
「チャレンジしながら成功率は上がっていくものだから、みんなで挑戦すればいい」
「失敗って、失って負けることじゃない。プロセスの一つ」
「失敗を恐れずにチャレンジしてきたからこそ、今ここにいる」
最後に観客の中から1人だけ質問 “代表取締役になって一番良かったことは?”
水野さん「特にない。まだ何もできていないと思っているから」
森實さん「良くも悪くも責任は全部自分にあるから、自分で決められること」
若月さん「副社長の時には見えなかった。社長になった瞬間見える景色が変わった。見たかったら社長になって!」
松本さん「社長になるとモテる。僕は人生モテ続けたい」
林さん「常務という立場で、社長の気持ちがよりわかるようになり、自分の役割をいかに果たすかがやりがいになっている」
石川「自分で意思決定できる幅が広がって、人や環境を変える喜びがある」
やっぱり取締役って“カッコイイ”。そして今回の6人はどこまでもお茶目だ。
さ!違う景色を見るために、明日からもがんばろう!
☆参加者からのメッセージ
・「挑戦した結果の失敗は問題ない」という言葉が印象に残りました。
・役職制度の廃止、年棒の自己申告制度の話は非常に興味深く、衝撃的でした。
・「できるわけない」と思うか 「できるかもしれない」と思うか。
・屋外開催(・∀・)イイネ!!
◎できるオトナの五感塾(場所:コラボスペースNAGOYA)
参加企業:de la hataraku 、ナカモ、Mizkan、サザコーヒー、春日井製菓
昨年の人気講座だった「五感塾」のバージョンアップ編。今回は、「五味を探求する」がテーマだ。食べることは体はもちろん、心にも繋がっていることを体験を通して学ぶ時間となった。ところで「五味」って何?答えは、「塩味(鹹味(かんみ))、辛味、酸味、甘味、苦味」の5つの味のこと。それぞれ体にどのような影響を与えるかについて、薬剤師で薬膳師の櫻井あゆみ先生が解説。
塩味=ほぐす
辛味=発散、乾燥、発熱
酸味=引き締める
甘味=補給、暖める
苦味=毒だし
ここから各味のプロが自社製品を携えて登場!参加者はテーブルに分かれてワークショップをスタート。
① 塩味(鹹味):ナカモの市川さん
1830年以来、まじめに味噌を作り続けているナカモ。社員全員が本社のある清州市在住と聞いて、驚きの声が上がる。
4種類の味噌(白みそ、米みそ、赤みそ(東海以外)、豆みそ)をお湯に溶かして飲み比べ、塩分の多い順に並べるという課題。味の違いはわかるけど、塩分濃度となると…とどのテーブルも困惑気味。初対面同士でも、同じ課題について話し合ううちに急に仲良くなる。「ごはんください!」「あさりを入れて飲みたいです!」いやいや、そういうワークショップじゃないんです。正解発表では、意外にも愛知県民が好きな豆味噌は塩分がそれほど高くないことが新たな発見だった。
「塩分濃度を知るためには、100gあたりの塩分量を表示でちゃんと確かめてくださいね!」(市川さん)
② 辛味:薬剤師で薬膳師の櫻井さん
発散したい時、乾燥したい時、発熱したい時とはどんな時?をグループで語り合う。乾燥したい時は体内がジメジメしている時と、全員一致。発熱したい時は?「会社に行きたくない時」という意見に会場内は大爆笑!
答えは
発散したい→鬱憤が溜まっているとき
乾燥したい→気持ちがジメジメしているとき
発熱したい→病原体が侵入してきているとき
ここでピーマン、しそ、大根、玉ねぎをそれぞれ生で食べ比べる。同じ辛味でも体調によっても感じる味が変わる。
「うまく辛味を使って、鬱憤を発散しましょうね!」(櫻井さん)
③ 酸味:ミツカンの田中さん
酸味は本能的に嫌われる味で、腐敗のシグナル。ただし食体験を積むと美味しく感じるようになるため、「学ぶ味」と言われる。ここでのワークショップは、穀物酢、リンゴ酢、米酢、黒酢、粕酢(赤酢)を匂いだけで当てるというもの。
「米酢と穀物酢の違いがわからない!」と多くのグループが悩んでいると、「すみません。餃子ください!」だから、そういうワークショップじゃないんです!笑 正解が発表されると、全問正解はなんと1チームのみ。お見事!
「五味の中で、どれだけ摂取しても体に悪影響がないのは酸味のみです。みなさんたくさんお酢を使ってください」(田中さん)
④ 甘味:春日井製菓の竹嶋さん
A,B,Cの飴の舐め比べからスタート。味の違いを説明するというお題に、真剣に舐め比べる参加者の皆さん。「Aは水飴っぽいよね」「Bはちょっと苦みがある?」「Cが一番好きかも。やさしい甘さだよね」など、各テーブルで自由に感想を話し合う。さてその正体は?
AとBは同じ原料から作っているのに、味が異なるのは作る時の温度の違い。
温度が高くなるとカラメル化が起こるから苦味が出る。
Cにはそもそもアミノ酸という旨み成分が入っている。メイラード反応といって糖とアミノ酸が結合することで美味しいと感じるようになる。
「黒糖のおいしさの秘密は、このメイラード反応と温度によるカラメル化によるものなんですよ」(竹嶋さん)
「ほほ〜〜〜。これは勉強になる!」と参加者の皆さん。
⑤ 苦味:サザコーヒーの鈴木さん
まずは「センブリ」の試飲から。センブリ??熱湯に浸して、千回振って苦味成分を出してもまだ苦味が残ることがその名の由来らしい。とにかく苦いから気をつけて!という鈴木さんの言葉に、全員が恐る恐る口にする。この世のものとは思えない!とあちこちから悲鳴が上がる。苦味とはこのことと、鈴木さんの説明は続く。苦味がおいしさに変わったものがコーヒーだった。その歴史を辿り、サザコーヒーが販売しているコーヒーは、徳川慶喜の直系の人が焙煎したと言われているコーヒーを再現したものとの説明に、「すごい!」ためになる話をしているのに、なぜか参加者の皆さんは笑いが止まらない。「おもしろすぎて、内容が頭に入ってこない」という人も。その理由は…鈴木さんの並外れたトーク術と、その独特な愛されキャラでした。
☆参加者のメッセージ
・ワークショップでグループの人の話が聞けたことがよかった。
・調味料や素材の味は、五味を意識して味わいたい。食材の探求も続けたい。
・舌だけでなく、脳と身体もフルに使って食事をしなければもったいないと思った。
◎大人の手紙教室(場所:コクヨ名古屋ライブオフィス)
参加企業:コクヨマーケティング、春日井製菓、クリスピー・クリーム・ドーナツジャパン、側島製罐
今年のおかサマの中で、唯一参加費が5,000円、参加者は限定10名というプレミアムな講座となった。いつからだろうか、便箋に直筆で手紙を書くことからめっきり離れてしまった。それでもやはり大事に人に大切な想いを伝えたい時には、大切に保管していた便箋を引っ張り出して、ペンで書きたくなる。書くことで自分の想いと向き合う、ゆったりと流れる時間を楽しんで欲しい、と長年インタビューライターを生業としている、フリーライターの私が企画・担当させてもらった講座だ。
名古屋の市街地の夕景が目の前に広がる中日ビルの17階にあるオフィスで、参加した10名の方に、2人1組になってもらってペアワークからスタート。誰に、なぜ手紙を書きたいと思っているのか。そしていつその手紙を渡したいのか、その想いをペアになった人に語ってもらう。
語ることで想いが具体的になり、言葉が見つけやすくなる。聞いてもらうことで、心の中の何かモヤモヤしたものが整理されてスッキリする。生き生きとした表情で語り合う10人の方々。
大好きなおばあちゃんへ。照れくさいけど一番大切な奥様へ。それぞれの想いが言葉になる。
その後は、自由に好きな場所で手紙を綴る。縦書き、横書きどちらでも好きな方を選び、その場で思い出の写真を箔プリントしたオリジナルの便箋を作成。
万年筆でもボールペンでもカラーペンでも、気持ちが赴くままに手に取ってもらう。少しだけ、言葉選びのアドバイスを伝えた後、講座会場となった会議室でそのまま座り続ける人も、隣接する開かれたコミュニティスペースの机を使う人も、エントランスにある小さな机で1人の空間にこもる人も。それぞれが1時間、言葉を探し、綴る。送る相手を想いながら。静かで穏やかな、まるで時間が止まったような空気が流れた。
書き終わったら、スパークリングワインとドーナツとお菓子をつまみながらのミニパーティ。3人の人が書いた手紙を朗読した。数年後の自分へ。留学に出発する娘へ。読み上げる声にも想いが乗る。聞き入って涙目になる参加者の方も。
参加者全員に、100年保管できる、側島製罐オリジナルの「手紙缶」を用意。
何年後でも渡したい時に渡したい人に渡せるように。
「宝物を託される人になろう」という側島製罐の想いがこめられた、真っ白な手紙缶は、参加者の方一人一人に手渡された。
☆参加者の声
・皆さんが集中して手紙に思いを綴っている時間と空気が印象に残りました。
・手紙の書き方ではなく、手紙の描き方という想いが優先されていたことがよかったです。
・このような場があってこそ大切に思っている人への想いを言語化することができたとしみじみ思いました。自問自答の進んだ愛おしい時間でした。
→教室編④へつづく
ライター:ましもさとこ
一日一餡を公言するアンコ好きライター。
甘いも、しょっぱいも、熱いも、冷たいも…どんなお菓子も人間もなんでもござれ!
2児の母でもあり、自宅にはお菓子専用ストッカーを設置。
通称「グミ也」と呼ばれるグミ好きの次男のために箱買いしている「つぶグミ」(特につぶグミプレミアムがお気に入り)が占拠している。