おかしなくらいおかし好きおかしなひとたち眠っている黒糖の知られざる底力を掘り起こす。
眠っている黒糖の知られざる底力を掘り起こす。
〜沖縄黒糖を愛する人たちが語る、
黒糖の現在(いま)と その先を見つめて②〜
日本への留学を機に沖縄県の食文化に興味を持ち、沖縄へ移住、起業したアメリカ人のクリスタル・バーネットさん。「日本人ってなんで肥満の人がいないの?」が沖縄県移住のきっかけだったとか。沖縄黒糖を世界中に広めたい!と果敢にチャレンジを続けているクリスタルさんのストーリーです。
<(株)ハイタイ・コーポレーション代表、沖縄県長寿科学研究センター メディアプロモータークリスタル・バーネットさん>
―青山学院大学から琉球大学の大学院へ
進学しようと思われたのは?―
長年、日本の文化や日本語を学びたいと思っており、在学していたフロリダ大学の提携校である青山学院大学に留学しました。21歳の時です。日本に来て最初に驚いたことが、“日本人は体型がスマート!なぜ大人になっても太らないの?”ということでした。“アメリカでは大人になると太る”ということは当たり前だと思われていますから。
青山学院大学で沖縄出身の友人から、「それは食生活の違いではないか。沖縄は長寿県だから、肥満と健康という点で調べてみるとおもしろいかも」と言われたことが、沖縄に興味を持ったきっかけです。いろいろ調べていくうちに、太らないことや長寿県であることが地元の野菜と関係しているのでは?と推測し、琉球大学の農学部で研究したいと思ったんです。
大学院に入学したものの、沖縄の野菜のことは何も知らなかったので、先生の勧めで「長命草」という八重山諸島の植物の研究をしました。長命草をはじめ、沖縄のハーブや植物なども研究し、それらと黒糖を合わせた料理なども作っていました。
―卒業後、沖縄で起業されたんですよね?―
2018年に合同会社を1人で立ち上げました。沖縄には体に良さそうな素晴らしい商品がたくさんあり、海外で絶対に売れると思ったからです。扱う商品の柱は健康食品です。まずはアメリカでの展開を考えたのですが、実際何がアメリカ人に好まれるかはわからなかったので、いろいろな商品を扱ってみました。さんぴん茶やシークワーサージュースなどと一緒に、沖縄黒糖も仕入れました。3年間、特別なマーケティング戦略なども行わずにやってみた結果、黒糖の売り上げが特に良かったんです。アメリカには黒糖を意味する“ダークブラウンシュガー”はありません。ブラウンシュガーはありますが、白砂糖にメイプルシロップを追加したような加工品で、当然黒糖とは味も栄養素もまったく異なります。“ダークブラウン”とはどういうものかを、私なりに新しい言葉を探し、英訳したことで興味を持ってもらえたことが、売り上げにつながったのかもしれません。2023年に株式会社に移行するまで、黒糖は毎年2、3倍ずつ売り上げが伸びていました。今も売れ続けています。最近ではアメリカだけでなく、オーストラリアやイギリスからも注文が入っています。
―アメリカではどのように黒糖が
使われているのでしょうか?―
私の会社では黒糖のカチ割りも粉末も扱っています。粉末の方が売れており、「コーヒーに入れるとすごく美味しい」というクチコミがもっとも多いんです。日本では黒糖の粉末をコーヒーに入れるのは、あまりメジャーではないですよね。どちらかと言えば、黒糖はおじいちゃん、おばあちゃんがカチ割りを食べるというイメージがあるような気がしていて。特に若い世代の方は黒糖に興味がなくなっているのでは?と思います。黒糖の本場なのに、もったいない!
そんな思いからYouTubeやInstagramを使って、英語で沖縄の文化や食について配信もしています。まだまだフォロワー数が多くないので、これから世界中でもっと増やして、ちょっとしたインフルエンサーになれたら、逆輸入のように、アメリカ人がこんなに黒糖を食べているなら、我々沖縄県民も食べよう!という流れになってほしい、というのがSNSで配信をする目的なんです。
―そこまで黒糖に惚れ込んだクリスタルさん
ご自身が感じている黒糖の魅力は?―
沖縄県の人が長寿なのは、黒糖を食べているからだとも言われていますよね。畑仕事の時も、太陽の下で黒糖のカチ割りを一つ口に入れて作業をしていたそうですし。私もそうですが、アメリカ人は長生きするためには砂糖は食べない方がいいと思っているんです。砂糖=白砂糖で、ミネラルやビタミンも含まれていないですから。でも甘いものはたまには食べたくなりますよね。甘いものを食べると幸せな気持ちにもなれますし。そんな時に黒糖は甘くて体にもやさしい、となると私も黒糖を使ったスイーツは食べたくなる。アメリカ人も同じで、その魅力は大きいと思いますね。だから、黒糖の良さを世界中の人に知って欲しいと思って、YouTubeなどでも情報発信に力を注いでいます。
黒糖もそうですけど、沖縄県自体に大きな魅力を感じています。まず人が優しく温かい。加えて独特な魅力的な文化もあります。太鼓を持って踊るエイサーを見た時は感動しました。もちろん食べ物も美味しくて、ゆったりとした気持ちで生活できる。この先、アメリカには戻るつもりはありません。おそらく沖縄で生きていくと思います。
一点、残念なことがあるとすれば、これほど健康的な食生活を送る沖縄のことを、発信している人が少ないということです。今のうちに長寿の方がどのような生活をしているのか調査をして、その記録をさまざまな言語にして世界に伝えようという人がまったくいない。これは私がやらなければ!という気持ちもあります。
まずは、沖縄料理のレシピ本を英語で出版しました。同じ材料が手に入らないという声もあったのですが、紅芋やさつまいもはアメリカのスーパーで普通に購入できます。ヨモギがなくても、その代わりになる野菜も提案しています。次は、アメリカでも簡単に手に入る野菜を使った沖縄料理の本を作る予定です。
―黒糖に関して春日井製菓の本田さんとの対談を
YouTubeでも配信していますよねー
どちらかと言えば、沖縄県内の企業はあまり新しいことにチャレンジしない印象です。その点、春日井製菓さんは新しい商品を作ろう!いい成分を見つけて発信しよう!というような行動力が素晴らしいと思っています。おそらく沖縄の人は身近すぎて、黒糖の本当の魅力がわかっていないんだと思います。春日井製菓さんのように県外の会社だと新たな気づきもあり、発信できるのではないでしょうかね。
研究者に関しても、本田さんのようにここまで黒糖の研究に力と熱意を注いでいる方がほとんどいないので、機能性の研究と発信という点で、沖縄県黒砂糖協同組合も本田さんに助けてもらっているとも言えるんですよ。もちろん私も本田さんの研究には注目しています。商品の良さを世界に伝えていくためにも、黒糖の機能性は重要な裏付けになりますから。
最後に、沖縄の子どもたちに私自身の生き方や仕事に対する考え方などをお話する機会があるんですが、私は今の仕事にとても大きなやりがいを感じています。おそらく本田さんも研究にやりがいと生き甲斐を感じていると思うんです。
それこそがメンタルヘルスに繋がるんですよね。外国人の私が沖縄で自分の会社を作ることができたんですから、みなさんもやりたいと思ったら何でもできますよ!と伝えています。
ましもさとこ
一日一餡を公言するアンコ好きライター。
甘いも、しょっぱいも、熱いも、冷たいも…どんなお菓子も人間もなんでもござれ!
2児の母でもあり、自宅にはお菓子専用ストッカーを設置。
通称「グミ也」と呼ばれるグミ好きの次男のために箱買いしている「つぶグミ」(特につぶグミプレミアムがお気に入り)が占拠している。