Kasugai春日井製菓株式会社

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おかしなひとたち

黒糖の日 沖縄黒糖ストーリー

眠っている黒糖の知られざる底力を掘り起こす。

〜沖縄黒糖を愛する人たちが語る、
黒糖の現在(いま)とその先を見つめて①〜

1623年に中国から製糖法が伝わってから今年で401年。さとうきびのみから作られる沖縄黒糖(※1)は、沖縄県の離島8島の経済や生活、さらには国の領土問題にも関わる基幹産業として重要な役割を担っています(※2)。
現在、この沖縄黒糖(以降、黒糖と表記)を製造しているのは粟国島、伊平屋島、伊江島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島の8つの離島のみ。 
最近では、黒糖がもたらす健康効果について、各種研究結果が発表されるなど注目されている一方、人手不足などの課題も抱えているのが現状です。

ここでは、沖縄黒糖全体を統括している沖縄県黒砂糖協同組合次長の宇良さんや、食品商社の方々をはじめ、長寿県・沖縄に興味を持ち、フロリダ州から移住、起業したクリスタル・バーネットさんなど、黒糖に深い愛情を注ぎ続けている人たちをクローズアップします。

※1「沖縄黒糖」は沖縄県産のさとうきびで作られた黒糖のみに使用することが認められています。※2同サイト「眠っている黒糖の知られざる底力を掘り起こす。〜春日井製菓の黒糖リサーチャーたち〜」参照

 

<沖縄県黒砂糖工業会・沖縄県黒砂糖協同組合 次長 宇良勇さん>

宇良勇さん:沖縄県那覇市出身。黒糖製造に関する調査研究、黒糖の販路拡大に携わる。大学時代野球部で投手として活躍した経験があり、趣味で草野球もやっている。最近では奥様と出かけることが休日の楽しみ。

「働き方改革で、今年度の人出不足は深刻です」


―今年の沖縄黒糖の出来はいかがですか?


2024年収穫分の出来は上々です。
収穫量自体は前年に比べてそれほど増えていませんし、さとうきび自体の背丈も低いのですが、品質がよく、糖度も高いため、味の良い黒糖になっています。

今後も質の良い黒糖を作り続けなければと思っているのですが、今まさに直面している問題が、深刻な人出不足です。原料となるサトウキビの収穫時期は12月〜3月。黒糖づくりは鮮度が命です。そのためこの間はどの工場も24時間稼働しています。しかし2024年問題で労働時間が制約されると、これまで60人体制で行っていた製造現場は、今年の冬からは交代制となり、100人以上は必要となる計算です。

しかも従来は、さとうきびの収穫期が東北地方など寒冷地の農閑期と重なるため、この期間だけ島に来てもらっていましたが、今までのように長時間働くことができなくなると稼ぎが減り、島に来る人も減ってしまうのではと危惧しています。
島の魅力を発信するとともに、賃金を上げることも考えていかなければいけないでしょうね。


―何か対策は考えていますか?


一つはハーベスターの導入です。機械でさとうきびを刈り倒し、細断まで行えるのですが、鮮度が命のさとうきびは、切り口が空気に触れるとどんどん糖度が下がってしまう。そのためすべてを機械刈りすることは難しく、良質な黒糖作りのためには、手刈りで長い状態のまま工場に運ぶことが重要となります。

また、ハーベスターを使うことで燃料代がかかります。実質的に収入減になってしまうことも、すべてを機械刈りにできないもう一つの理由です。
ただ人出不足は待ったなし!機械刈りへの移行は避けては通れません。あとは工場内で鮮度を維持する対策を講じなければなりません。

「黒糖のこと、ちゃんと知ってほしい」

―人手不足以外にも、今抱えている課題はありますか?

 

黒糖そのものの魅力が知られていないことです。黒糖は離島でしか作られていない特産品であり、沖縄県の離島地域の経済を支える製品でもあり、製法を含めてSDGsそのものなんです。唯一無二のとても個性的な商品です。国内はもちろん海外にも押し出せる魅力的なアイテムだと確信しているのですが、残念なことにこの魅力があまり知られていない。実は沖縄県民でさえ、黒糖と加工黒糖の違いをわかっていない人が多いんです。

県内のスーパーに行くと、売り場の一角に黒糖コーナーがあるのは沖縄県だけでしょう。ただ、そこには黒糖に粗糖・糖蜜などを混合した加工黒糖や、黒糖をいっさい使っていない加工糖、さらに輸入黒糖なども並んでおり、県民でも色だけですべて「黒糖」だと思っている人が多い。値段だけ見ると、安くて量の多い加工糖の方が手に取りやすいというのはわかるんですが。味や風味はもちろん、含まれる栄養素も異なります。最近では円安の影響もあって、輸入黒糖との価格差は縮まっていますが、加工糖は安いですからね。

―“黒糖”と謳っている商品を作っている食品メーカーはどうですか?


残念ながらコスト削減などのために本物の黒糖を使い続けているところは少ないです。そんな中、黒糖の良さをちゃんとわかって長年使ってくれているメーカーさんは、よく考えてみると春日井製菓さんをはじめ、いわゆる老舗といわれる、消費者に長年愛されている商品を作っているメーカーさんだけですね。本物とそれ以外の違いをちゃんと分かっていて、サトウキビの不作、豊作による価格の変動に関係なく、必ず黒糖を使ってくれる。原材料へのこだわりが半端ないのは、ものづくりの軸がぶれていないからでしょうね。

春日井製菓さんで言えば、定期的に会長さんや役員さん、工場勤務の方も現地まで足を運んで、時にさとうきび刈りも手伝ってくれる。ちゃんと目で見て、味を確かめて、我々の話にも耳を傾けてくれる。そこまで原材料にこだわっている企業は本当に少ないです。企業の姿勢というか、ものづくりに対する理念なんでしょうね。おそらく黒糖を使った商品以外のものも、同じように原材料にこだわったものづくりをしていることがわかりますよね。

「黒糖づくりは離島の人間の生き甲斐です」

―春日井製菓では、黒糖のもつ機能性について研究を進めていますが、期待することはありますか?

 

まず、春日井製菓さんにというか、研究者である本田さんに感謝したいのは、「黒糖」そのものについての付加価値を高めようと、熱心に研究に取り組んでもらっていることです。
最近、世の中では白砂糖ってどちらかというと敬遠されがちですよね。「黒糖の方が“何となく”体に良さそうだから」というのが理由だと思うのですが、その“何となく”を、本田さんをはじめとした、研究者の皆さんが、さまざまな角度からアプローチをして数値化することで、黒糖の機能性が謳えるようになっています。機能性という付加価値のおかげで黒糖商品が格上げされて商品が売れれば、当然黒糖のニーズも高まります。そのために我々も研究の協力は惜しみません。もちろん、売上が上がると嬉しいという理由もありますが、それ以上に、本田さんのあの探究心と熱量に突き動かされている部分が正直大きいかもしれません。黒糖の素晴らしさを追究し、広めたい!というまっすぐな思いであちこち動き回り、大学との共同研究にも積極的に取り組んでいますよね。その熱意に背中を押され、我々もより質の高い黒糖を作り続けなければいけないと思っています。

今後、機能性の高い黒糖を使った商品を開発してもらうことで、春日井製菓さんに収益を上げてもらえれば、我々にとっても安定した供給先となるのでメリットが大きくなります。それだけではなく、島の人間は自分たちの黒糖は最高だと自負しています。さとうきび農家も同じです。自分たちが作り、届けた黒糖がこんな有名なメーカーに使ってもらっている、こんな人気商品に使われている、ということが、彼らのやりがいにも、もっと言えば生き甲斐にもなっているんです。新しい黒糖商品の展開を楽しみにしています。

―組合として、今後、どのような活動を行っていきたいと考えていますか?

沖縄県は長寿県として知られています。しかしこの先はそうではなくなってしまうでしょうね。原因は間違いなく食生活の変化です。すでに我々世代でも黒糖を使った料理など、昔ながらの沖縄の伝統食を作ったり食べたりする機会が減っています。当然子どもたちも食べていません。小学校の給食でも黒糖パンがたまに出るくらいです。予算の面でやむを得ないところもあるとは思いますが。

ただ、子どもの時に食べた味の記憶は大人になっても忘れません。だから「食育」が大事になるのでしょうけど、子どもたちに本物の黒糖の味を知ってもらうことが、我々がやるべきことでないかと思っています。2年ほど前、県内はもちろんですが、全国の黒糖を使っていない小学校の給食用に、無償で提供しますと呼びかけました。するとかなりの申し込みがありました。栄養士にレシピも考えてもらって一緒に送ったのですが、子どもたちに黒糖の味を知ってもらういいチャンスになりました。

あとはイベントです。さとうきび畑が身近にない沖縄本島の都市部では、砂糖がどうやって作られているかも知らない子どもたちが多い。さとうきびを触って、実際に絞って、黒糖を作って食べるという体験を行っています。愛知県でもそんなイベントもやれたらいいなと考えています。

八島黒糖160g(粒) – 沖縄黒糖オンラインショップ (okinawa-kokutou.jp)

黒糖って馴染みがないと、どちらかといえばちょっととっつきにくいものかもしれません。ただ体に嬉しい機能もあることがわかっていますので、毎日の生活に少し取り入れてみて欲しいです。コーヒーに入れると意外に合いますし、私は朝食のパンに、パウダー状の黒糖をかけたものがお気に入りです。もちろんアイスクリームやかき氷にも。いつもの砂糖をちょっと黒糖に替えてみる。そんなことから本物の黒糖の味を知ってもらえると嬉しいですね。

―最後に春日井製菓と関わりの深い食品商社という立場から、春日井製菓の黒糖商品や研究について感じていることを聞かせてください

 

左から食品商社の福山良太さん、高橋伸斉さん、沖縄県黒砂糖協同組合専務理事(取材時)の崎原盛光さん、宇良勇さん

我々は主に砂糖を扱う商社です。「黒糖は体に良い」ということは、長年言われていましたが、イメージだけで具体的な裏付けがありませんでした。「そういうもの」として捉えられていた黒糖を、研究対象に取り上げたのが本田さんでした。正直、今さら!?と思ったのですが、本田さんの黒糖研究への情熱はすごかった!自ら何度も現地に足を運び、「自分たちがやらなければいけない」という気迫さえ感じていました。そのおかげで、黒糖は唾液の分泌を促すなどの具体的な研究結果を得て、超高齢化社会において重要な食品としてアプローチが可能になりました。これは黒糖を扱う弊社にとっても追い風となり、黒糖の販売強化にも繋がっています。
春日井製菓さんは、サトウキビが豊作でも不作で価格が高くても毎回定量を仕入れ、いざという時のために保管コストをかけても在庫をキープしています。なかなかこういうメーカーは珍しい。こうした「国産の黒糖を使い続ける」というブレない信念が、黒糖研究の熱意にも通じているような気がしています。「体により良い商品を作りたい!」という本田さんの思いに、我々も一緒に取り組んでいきたいですし、一緒にできることをとても楽しみにしています。

 

 

 

 

 

 

ましも

一日一餡を公言するアンコ好きライター。
甘いも、しょっぱいも、熱いも、冷たいも…どんなお菓子も人間もなんでもござれ!
2児の母でもあり、自宅にはお菓子専用ストッカーを設置。
通称「グミ也」と呼ばれるグミ好きの次男のために箱買いしている「つぶグミ」(特につぶグミプレミアムがお気に入り)が占拠している。